12.化石燃料枯渇抑制と温暖化防止

   「雑説 技術者の脱炭素社会」の自解(12/21)

( うた ) た今昔、顧みるに、今より時を隔つわずか20余年の1990年代中頃、太陽光など再生可能エネルギーの開発、これ化石燃料の枯渇抑制と地球温暖化防止、双方へ貢献せんがためなりき。既に温暖化問題はあれど、化石燃料枯渇対策の比重、より大にして、CO2何トンの削減といふより、石油何トンの節約といふ表現一般なる時代なりき。

 20年余前から世界は、将来的に枯渇する化石燃料は貴重とする一つの極から、CO2発生の元である厄介者の化石燃料は全廃すべきという、もう一つの極へ加速しながら奔り始めた。今まで化石燃料の枯渇は石炭を含めれば100年200年先のことと想定して進んでいたものの大きな方向変換である。特に日本では2020年、脱炭素の政策が明確に打ち出されてから、それまでの「低炭素」の語はたちまちに「脱炭素」に置き換わった。ただ実際に、具体的に表へでてくるのは相変わらず既存電力対応中心の「低炭素」の範囲の話ではある。

 もちろん世界中で「脱炭素」の議論はなされている。最終的には2050年のカーボンニュートラルを想定した、横軸に年次、縦軸に石油、再生可能エネルギーなどそれぞれの一次エネルギー量をとった予測曲線が各方面にみられるようになった。ただ年次の前半はともかく、後半のその手段や方法は具体的ではないように見える。

 20年ほど前、すなわち、化石燃料の枯渇を考慮して、あるいはそれに温暖化を追加考慮して想定された予測カーブでは、各論者、各組織が必要と想定する右肩上がりのエネルギー量から、それぞれの立場・見解によって異なる割合の石油、石炭、天然ガス、原子力分を差し引いた残りを、当時は実質的には殆ど寄与のなかった再生可能エネルギーに期待し、負わせていた。そして概ね2100年時点でも、化石燃料は応分の割合を担っていたのである。最近のカーボンニュートラル目標では、多くがエネルギー全体の使用量は頭打ちで少なく見積もっているが、その横軸の年代の極端な短縮が、20年前との最も大きな差異であることは言うまでもない。

 文明をつくるという観点からすれば、古来からその最大の駆動力は、折々の政治や社会経済を触媒とした、「エネルギー」と「技術」であったといえよう。そのエネルギーという人類の生活・文明の土台となるものの将来予測・目標が20年余で殆ど異質のものに変わったわけである。これから20年の後にいかなる状況になっているか、結果がどうであれ、長い人類のエネルギー利用の歴史のなかでも特異な期間となるであろうことは疑いがない。

本文は「雑説 技術者の脱炭素社会(改訂増補版)」(2023年11月、梓書院)の「自解優游」の一部です。

 *アマゾン https://onl.bz/pDuFDYn