2.CO2による温暖化

  「雑説 技術者の脱炭素社会」の自解(2/21)

頃日 ( けいじつ ) 、さる所にエネルギー技術の講演機会あり。聴講の一人の若き、講演後のわれに寄り来りて問ふ、方今に至るも地球温暖化の議論なほ多し、このままCO2の排出続かば、温暖化進み地球環境破滅に及ぶべし、これ真実なるや、虚偽なるや、先生 如何 ( いかん ) の感をなせるやと。11

 温暖化に対するCO2の影響については、工学技術者は専門外であるから、ひと昔の彼らの報文では多くが「温暖化の原因と されて ( ・・・ ) いるCO2」になっていたように思う。今でもこの分野の技術者で、人為排出CO2の将来の気候に対する影響について自信をもって断言できる人は多くはない筈である。その予測法の性格からして、使用パラメーター、結果の不確かさまで含め了解している人は、極論すれば、実際に様々な仮定を含む予測シミュレーション計算をした気候関係の研究者その人、そのグループだけであろう。酸素や窒素と同じ対称型の分子であるCO2がなぜ赤外吸収能をもつのか、この説明は一般人は勿論、専門分野以外の技術者にはことのほか難しい。温暖化機構理解の基本中の基本ですらそうであるから無理もないことではある。

 それに比べると、脱炭素がどれくらいの難易度であるかは、現在これに関与している、ひろく捉えれば膨大といってもよい多くの技術者はある程度具体的に判る。従ってほどほどの低炭素迄であれば、すなわち化石燃料の高度利用や、省エネ技術など、これらはCO2問題がなくとも必要な技術であり施策であるが、それを越えて現在のような脱炭素迄の厳しい要請がなされると、その技術・施策の難しさと、全くの専門外である温暖化予測の不確かさの均衡がより気にかかることにはなる。

 ただ、専門外のこと、特にこのような大きくかつ微妙な問題へのうかつな言及の危うさはいう迄もないことである。

本文は「雑説 技術者の脱炭素社会(改訂増補版)」(2023年11月、梓書院)の「自解優游」の一部です。

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