21.結語

  「雑説 技術者の脱炭素社会」の自解(21/21)

何ごともほどほどに、分を ( わきま ) ふ、これ持続可能とせんがための基本ならんや。・・古賢も云ふ、「禍ひは、足るを知らざるより大は ( ) し」、「足るを知る者は富む」と。生命四〇億年前の誕生より 曠劫 ( こうごう ) 年月世代かけ進化しきたりしが、すなはち現在の生物にして、その最先端に在るは独りヒトのみにあらず、また太陽光や風、ヒトがためにのみ存するにあらず。

 表掲文の意は明らかであろう。ギリシャ・デルフォイのアポロン神殿の入り口には、ソクラテスの「汝自身を知れ」と並んで、「何事も度を越すな」という格言が刻まれていたというから、洋の東西別なく、昔からの教えとして伝えられているところである。

 エネルギー利用の低炭素から脱炭素に進む大きな時代の流れは、今後も止まることはなく、そのための再生可能エネルギー利用拡大の必要性は、世界の共通認識であろう。ただ、やはりエネルギー利用の贅沢を差し控える、という発想なくしては、将来は危ういことを我々は改めて確認すべきと思われる。 

 自解とはいえ、このような技術についての書の最後に置くのはいかがかとも思うが、これを以て結語としたい。

本文は「雑説 技術者の脱炭素社会(改訂増補版)」(2023年11月、梓書院)の「自解優游」の一部です。

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